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- まとめ
10代の出産、育児放棄、児童虐待、不登校など子どもをめぐる社会的課題は複雑・深刻化しています。その背景には世代間での貧困や格差の連鎖があります。子ども・若者支援を大阪の未来へとつなぐため、世代間の貧困や格差の連鎖を断ち切る取り組みの報告がありました。
辻 由起子(大阪府子ども家庭サポーター)

児童虐待死でもっとも多いのは「0歳児」です。予期しない妊娠から妊婦検診未受診や母子健康手帳未発行が報告されています。未受診の理由は、経済的問題だけでなく知識の欠如や誰にも相談できずに孤立している状況があります。教育機関で『性・生教育』に取り組むことや、匿名が守られ無料で心と身体の相談ができるユースクリニックの創設が必要です。
プロフィール 18歳で結婚、19歳で出産、23歳でシングルマザーに。仕事、育児、家事をこなしながら、通信教育の大学を2回卒業し社会福祉士・保育士などの資格取得。大阪府知事認定子ども家庭サポーターの相談業など現在活動中。
高 亜希( 認定NPO法人ノーベル )

保育園では37度5分以上の熱を出すと預かってくれません。私たちは「子どもを産んでも当たり前に働ける社会」をめざし、病児保育に取り組んでいます。病児保育のニーズが増えていますが、支援体制は圧倒的に不足しています。大阪はひとり親家庭が多く、誰もが安心して病児保育を受けられる支援が必要だと思います。
プロフィール 2009年にNPO法人ノーベルを設立。2010年2月に関西初となる共済型・訪問型病児保育サービスをスタートさせる。病児保育を通じて「子どもを産んでも当たり前に働ける社会」をめざして現在活動中。
今井 紀明( 認定NPO法人D×P )

通信制・定時制高校は勤労高校生のイメージがありますが、今は中学校で不登校や高校中退した経験者、貧困家庭など、さまざまな「しんどさ」を抱えた高校生が集まっています。そして通信制高校では約4割、定時制高校で3割が進学も就職もしないまま卒業しています。高校はそうした若者にとって最後の砦であり、就職や引きこもり手前の支援が効果的だと思います。
プロフィール 「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会」をめざして2012年にNPO法人D×Pを設立。通信・定時制高校に通う高校生向けの独自プログラムを関西で展開し、現在札幌、京都へと拠点が拡大。
2018年は北海道や大阪府北部地震、西日本豪雨や台風と災害が多い年でした。避難生活の中で「災害関連死」や復興支援の担い手が減少するなか、要配慮者への対応など、南海トラフ巨大地震を見据えた「防災・減災の社会」実現にむけた取り組みの報告がありました。
八幡 隆司( NPO法人ゆめ風基金 )

2013年に災害対策基本法が改正され、名簿情報の開示など進展はありましたが、安否確認しようとしても、名簿には携帯番号の記載がなく確認方法の見直しが必要です。福祉避難所は2次避難所と位置づいておりますが、開設に1週間かかった現状があります。障害者差別解消法の施行により、一般の指定避難所での障がい者への合理的配慮が求められています。
プロフィール 1995年の阪神・淡路大震災を機に、自然災害で被災した障がい者を支援する目的でNPO法人ゆめ風基金を設立。災害時の緊急救援基金や全国の障がい者団体と「災害に強い共に生きる社会」をめざしてゆめ風ネットワークを構築。
深山 恭介( IVUSA=NPO法人国際ボランティア学生協会関西事務所 )

授業の合間をぬって炊き出しや家の泥出しなどに取り組んでいます。南海トラフ巨大地震では大阪府の人口の68人に1人が亡くなる可能性も。災害から命を守り抜くには、避難情報などを情報弱者へ確実に伝達することや、小・中学校からの防災教育が必要になります。また、被災地では若い力が必要です。高校生・大学生といった将来世代のボランティア活動を通した学びを後押しする仕組みも必要だと思います。
プロフィール 全国90大学、約4,000名の学生が「国際協力」「環境保護」「地域活性化」「災害救援」「子どもの教育支援」の分野を軸に活動。活動を通して多くの国・地域の多様な人たちと「共に生きる社会」の実現をめざす。
少子化や核家族化の変化で一人暮らしの高齢者の社会的孤立、障がい者の福祉就労における工賃の低さや親なき後の生活自立の問題などがあります。誰もが地域で安心して暮らし、生きがいを持つことができる「居場所」と「出番」をつくる取り組みの報告がありました。
永井 佳子( 高齢者外出介助の会 )

高齢になると外出が困難になり、閉じこもりや社会から孤立してしまいがちになります。私たちは外出支援のほか、独居高齢者が多い大阪市中央区の空堀を拠点に、話し相手がほしい方、歩き疲れた方など誰でも立ち寄ることができる「からほりさろん」を開きました。とり残された人たちを見捨てることなく、最後まで自分らしい納得した暮らしができるよう支援をおこなっています。
プロフィール 高齢者の閉じこもりや孤立化による寝たきりや認知症を防ぎ生活の質の向上を目標に、イキイキとした前向きな生活を支えようと介護保険サービス外の在宅高齢者の生活全般にわたる幅広い支援を目的に活動中。
白木 裕之( NPO法人ホワイトネット )

福祉施設に入所された高齢者から「なんのために生きているのかわからない」とよく聞きます。施設では社会参加の仕組みがありません。私たちの事業では、靴下の端切れを利用した「指編み」の指導を行っています。そして作品をカンボジアの孤児院に送り、現地からは子どもの笑顔の写真が届くなど、要介護の状態でも社会貢献できる仕組みをつくっています。
プロフィール 高齢者の社会的な孤立を防ぎ、「高齢期こそ人生で一番輝けるとき」と思える社会をめざし、2011年にNPO法人ホワイトネットを設立。「白髪になってからが人生オモシロイ」をキャッチフレーズにカフェやツナガリ写真展などを開催。
中川 悠( NPO法人チュラキューブ、株式会社GIVE&GIFT )

障がい者が就労訓練の月20日働いて得られる工賃は、全国平均で約15,295円※。大阪は全国ワースト1で11,209円※です。集客力・販売力が高い都心型モデルの考え方に切りかえ、大阪のオフィス街にカフェ併設の障がい者作業所を設立。商品開発に力をいれ、近隣店舗の価格を調査し、工賃(交通費をふくむ)は15,000円~30,000円を達成しました。※金額は2016年度
プロフィール さまざまな社会課題の解決にとりくむために(株)GIVE&GIFT(2007年)、NPO法人チュラキューブを設立。(2012年)「GIVE&GIFTカフェ」はグッドデザイン賞(2016年)を受賞した。
ナビゲーター 施 治安

国や地域の安定をもたらすことが政治の目的です。現在、年収200万円未満の男性は全体の約10%、女性は約40%と言われています。しかも社会課題はさまざま複雑に連鎖しており、それらを放置することは社会の安定を著しく毀損させます。これは大きな政治課題だといえます。生活の現場で苦しみ、悩む人たちが立憲民主党と草の根の連携をすることに期待します。
プロフィール 大阪生まれの台湾籍華僑。社会起業家のネットワークを創設し、非営利・行政・企業など縦割りセクターを超えた協働を促進することで大阪の活性化を図る。(株)遊企画 取締役会長。「大阪を変える100人」会議 特別顧問。「民都大阪」フィランソロピー会議設立メンバー。その他行政諮問委員・大学講師・経済団体アドバイザーなど多肢に関わる。
ナビゲーター 早瀬 昇

制度を変えるには「まず行政との交渉」となりがちですが、その前に政治家と対話をしておけば、より柔軟で創造的な改革が進む。これは100年も続いた官尊民卑の公益法人制度に風穴を開けたNPO法制定のプロセスで学んだことです。市民団体は不偏不党が基本ですから、多くの政党とも対話を進めたいところですが、「参加」を重視する立憲民主党が率先して対話の機会を持ったことを高く評価したいです。今後の継続を期待します。
プロフィール 1955年、大阪府出身。学生時代に様々な市民活動に参加。フランス・ベルギーの福祉施設で研修後、78年に大阪ボランティア協会に就職。91年より事務局長。企業とNPOの連携促進やNPO法制定などに取り組み、2009年に退職。12年~18年に日本NPOセンター代表理事も務める。現在はボランティアの立場で大阪ボランティア協会の常務理事を務める。